『マッピング思考』を読んで、自分の考えから少し離れてみる

「ナッジ」とか『予想どおりに不合理』とか、人間の思考の癖についての本を何冊か読んできました。

癖があるのは分かった。じゃあ、どう付き合うのか。

その続きが知りたくて、ジュリア・ガレフの『マッピング思考』を読んでみました。

難しい思考法というより、自分の考えを少し外から見る。メタ認知に近い感じでしょうか。問いの向きを少し変える本です。

信じたいときだけ、問いが変わる

都合のいい話には、信じられる理由を集める。都合の悪い話には、どこかに穴がないか探す。

ちゃんと同じ基準で考えているつもりでも、欲しい答えに合わせて最初の問いから変わっている。言葉にすると単純ですが、心当たりはかなりあります。

本の中では、心理学者トム・ギロビッチの言葉として、こんな二つの問いが紹介されています。

  • 信じたいとき:「なんとかしてこれを信じられないだろうか?」
  • 信じたくないとき:「どうしてもこれを信じなくてはならないのだろうか?」

並べると、最初から審査の厳しさが違う。ずるい。でも思い返すと、結構やってる。

しかも、この癖は知っただけでは消えません。「よし、今日から客観的に考えよう」で直るなら楽ですが、たぶん無理です。脳みそに染みついている。

そこを気合で直そうとしないのが、この本の面白いところでした。立場や状況をひっくり返して、自分の考えを横から見てみる。

自分じゃなかったら、どうする?

一番使いやすそうだったのが「部外者テスト」です。

たとえば、炎上しているプロジェクトを「今日初めて引き継いだ人なら、同じやり方を続けるか?」と考えてみる。すると、さっきまで並んでいた理由が急に弱くなります。

「友人から同じ相談をされたら、なんて言う?」でもよさそうです。自分の話ではなくなった瞬間、見え方が少し変わる気がします。

見返し用:使えそうな問い

本には、自分の考えがバイアスに引っぱられていないかを点検する、5つの思考実験が出てきます。名前だけでは忘れそうなので、例と一緒に残しておきます。

  • ダブルスタンダード・テスト
    • 問い:立場が逆でも、同じ基準で見る?
    • 例:他人の締め切り遅れは「準備不足」、自分の遅れは「急な仕事が入った」で済ませていないか。
  • 部外者テスト
    • 問い:これが友人の相談なら、どう答える?
    • 例:今の悩みを、友人から相談されたつもりで考えてみる。
  • 同調テスト
    • 問い:周りが正反対の意見でも、自分はそのまま? 周りの意見で決めてない?
    • 例:みんなが急に「そのツールは微妙」と言い始めても、自分は使いたいだろうか。
  • 選択的懐疑主義テスト
    • 問い:反対側に有利な証拠でも、同じ厳しさで見る?
    • 例:自分のポジションに合う意見だけ、根拠を気にせず信じていないか。
  • 現状維持バイアステスト
    • 問い:すでに別の状態なら、わざわざ今へ戻る?
    • 例:すでに転職先で働いているとして、今の職場へ戻りたいだろうか。

ほかに覚えておきたいのが、この2つ。

  • 等価ベットテスト
    • 問い:自分の予測と、確率が分かっているくじ。報酬が同じなら、くじが何%のときに「どちらでもいい」と思う?
    • 例:「作業が週末までに終わる」という自分の予測に賭けるか、80%で当たるくじに賭けるか。くじを選ぶなら確率を少しずつ下げて、どちらでもよくなる境目を探してみる。その数字が、自分の実感に近い確信度。
  • イデオロギー・チューリングテスト
    • 問い:自分と反対の立場を、その人が「そう、それが言いたかった」と思える形で説明できる?
    • 例:リモートワーク反対派を「社員を監視したいだけ」と片付けず、「新人育成やちょっとした情報共有が難しくなるのが心配」と、反対派が実際に挙げそうな理由で説明してみる。

どれも、これ一発で正解が出るようなものではありません。ただ、いつもの考え方から少し離れるきっかけにはなりそうです。

これ、メタ認知に近いのかも

読んでいて、これはメタ認知に近い話なのかも、と思いました。日本語版のサブタイトルにも「メタ論理トレーニング」とありますが、論理というかは認知をメタる話に近い。

「いま自分はどこにいる?」「何を前提にしている?」「これが自分の話じゃなかったら?」と、答えを急ぐ前に現在地を見直す。ちょっと高いところから自分を見る感じです。

本には「これはメタ認知です」とは書かれていません。あくまで自分の読み方ですが、このくらいに捉えるとかなり分かりやすい。

そのため、既にメタ認知や認知バイアスを知っている人には、内容が少し冗長に感じられるかもしれません。

まずは一問だけ

5つの思考実験を毎回思い出すのは、たぶん無理です。まずは迷ったときに、「これが友人の相談なら、なんて言う?」と一度だけ考えてみます。

自分の考えを全部疑うのではなく、少しだけ離れて眺める。気合で思考の癖を直すより、ちょっとずつ迂回する。そのくらいが自分には合っていそうです。